平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

川久保玲の「白」   2018/06/05

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2018年1月19日、巴里ファッション ウィークにて披露されたCOMME des GARÇONS HOMME PLUS 2018秋冬のテーマを、川久保玲は「WHITE SHOCK」と隠喩した。美術担当 下田昌克の恐竜が異彩を放つ。また、同3月に発表されたレディースコレクションのテーマは、「CAMP」。「CAMP」と聞いて、女優・范文雀のポートレート写真集『CAMP』(アートディレクター松岡正剛、ブックデザイン戸田ツトム,工作舎,1976)を想い浮かべ方もいるだろう。

以下、雑誌『SWITCH』(VOL.36,NO.6,JUN.2018)のロングインタビューから抜粋。




・私は一貫して「PUNK」=反骨精神というテーマを表現することをこころがけてきたと思う。ずっとそれをコレクションで表現し続けているし、繋がっているものだと思っています。今の時代、表面的な言葉になってしまった「PUNK」ではなく「CAMP」こそが私の気持ちの中では同じ地平で表現されるもの。前に進む人へ、少しでも後押しになればいい。「PUNK」も「CAMP」も意味は違っているが、精神では同じです。

・「PUNK」も「CAMP」も、重層性というのは表現のテクニックなのです。

・コム デ ギャルソンの2017年のDMシリーズを覚えています?ポール・テック。「CAMP」を象徴するアーティストです。

・スーザン・ソンタグの批評に彼の作品の影響が見られると思う。

・いつも思うことはひとつなのです。いろいろ違った言葉で言い換えることが、時には必要なんです。

・白というものは、これからの未知なる不穏なものを現す(※ママ)、同時に最上の無垢なるものを現す、そのどちらも自身に問うものです。私自身は、白は強さ、堅牢さを象徴するものだと思っている。「PUNK」でも「CAMP」でも、反抗というものは黒のイメージにとらわれてしまう。表現の素材としては、黒の醸し出す力が圧倒的ではある。

・今、あえて白で表現することが力だと、私は思っています。黒の反抗のイメージを延長するのではなく、白で表現することに、私は第一義を見出してトライした。ただ、もうひとつ何かがほしいと思ったのです。ジュリアン・ディスのヘアスタイルと、何かもうひとつという思いがあった。そこで下田さんの作品を使わせてもらうのはどうかと思った。いわばひらめきです。それがコレクション発表の一週間前のこと。今年の一月に入ってから思いついたものでした。それまでは頭になかった。何かどこかで導かれた、導いたのですね。いつもそのひらめきを大事にする。

・私はいつもそういう過程を踏まえた作り方なんです。はじめに地図は描かない。こちらでひらめいたこと、あちらでひらめいたことをゆっくりとたぐり寄せる。全然繋がりのないひらめきが、ある日重なって音楽のように強く心に訴えかけてくるのです。そしてコレクションの間際になると、重層的に繋がるのです。つまり偶然なのです。

・白です。もともとは白なのです。例えば動物で、突然変異で白いものが生まれることがある。ヒョウとかトラとか。(中略)表現したかったのはその白なのです。はじまりの色、そこから旅のように白の世界をめぐる冒険がはじまる。

・できない、NOと言われることを数多くこなす。いつもその連続です。

・手を動かしながら現れてくるのを待つ。ひたすら待つだけなのです。

・例えばディスプレイ、服を見せるためのボディが二つ並行して並んではいけないのです。微妙な角度というものがあるのです。きれいな角度。それは言葉では言い表せない感覚です。指が覚えているような。

・コレクションはライブです。

・変わるきっかけは些細なこと。何かを着ると別の人間になれる感覚かもしれない。

・私はアーティストではないです。ビジネスでやっていますから。

・今までにないものを表現する、「PUNK」は状況を伝え、「CAMP」は内面のものを伝えるもの。両者は似て非なるもの。

・テクニックでは駄目で、思想、哲学をきちんとしないとね。テクニックではなく、大切なのはディレクションです。前のものをなかったこととしてはじめる。価値観の否定です。新しいもの、見たことがないものへ。違う表現をしたいです。







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http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/2375.html


◆VOGUE公式サイト
https://www.vogue.co.jp/fashion/interview/2017-06-reikawakubo/page/9


◆「i-D」公式サイト
川久保玲による「カワイイ」:comme des garçons 2018ssコレクション
https://i-d.vice.com/jp/article/qvjxbb/comme-des-garcons-2018ss


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