平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

トップモードは、はかなく、刹那的で、泡のようなもの 〜コムデギャルソン 2012/01/09

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コムデギャルソンの川久保玲を知っている人なら、次の言葉の重みがわかるだろう。(朝日新聞 2012年1月7日朝刊 インタビュー2012『ファッションで前に進む』オピニオン) ◆記者 ○川久保

冒頭近くで、記者の質問を受けた川久保はこう答える。

 ○ 「すぐに着られる簡単な服で満足している人が増えています。他の人と同じ服を着て、そのことに何の疑問も抱かない。服装のことだけではありません(略)ファッションの分野に限らず本当に個性を表現している人は、人とは違うものを着たり、違うように着こなしたりしているものです。そんな人は、トップモード(流行の最先端)の服でなくても、Tシャツ姿も『この人は何か持っているな』という雰囲気を醸し出しています。本人の中身が新しければ、着ているものも新しく見える。ファッションとは、それを着ている人の中身も含めたものなのです(略)」



◆これまでの西洋的な美の基準にあえて異論を唱え、新しい美を追求する姿勢から「反骨の母」と呼ばれています。その反骨心はどこから来るのですか。
 ○ 「世の中の不公平や不条理なことへの憤りでしょうか。本当は私だってそんなに強くはないですよ。ただ、強気のふりも時には必要です。ふりでもいいのです。そうしないと前に進めないから。大変だな、どうしよう、としょんぼりしているだけでは何も変わらない。私も毎シーズン、自分の発表した作品が不十分だったのではないかと一度は落ち込んで、それからなんとか立ち直ったつもりになるのです」


キーフレーズを拾ってみると

 ○ 「・・・クリエーターというものはマジメにやれば、たいていは貧乏になってしまうものです」


 ○ 「・・・『どこかで見たことのあるようなものはダメ』と自分を懸命に追い込んできました。ところが、それを理解して認めたり、着てみようかと思ったりしてくれる人がだんだん減ってきたと肌で感じています」


記者がさらに、こう切り込む。

◆ ファッションがあらゆる分野の流行に影響を与えた時代がありました。もはやそんな時代ではないのでは。
 ○「それは時代の変化で、そうかもしれない、もう負けかな、と思うこともあります。状況を変えられていないのは事実ですから。けれどもファッションにはなお、人を前向きにさせて、何か新しいことに挑戦させるきっかけになる力があると信じています(中略)ファッションはたった今、この瞬間だけのもので、それを今着たいと思うから、ファッションなのです。はかないもの、泡のようなもの。それは刹那的なものだからこそ、今とても大切なことを伝えることができるのです」

はかない、泡のようなもの、刹那的。 僭越ながら、これはわたしがずっと大事にしてきている感覚と同じである。

この全ページをたっぷりと使ったインタビュー記事は、箴言にあふれている。


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◇ Comme des Garçons公式サイト
http://www.comme-des-garcons.com/




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※今日現在、twitter上でつぶやかれている平野雅彦さんは、私平野雅彦ではありません。


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