平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

中学生Mちゃんのお友だち、Eちゃんのご質問にお答えします   2011/02/11

keitai


中学生Mちゃんのお友だちでテニス部のEちゃんから1月末に携帯メールを使って質問を戴いた。既に2月頭にお返事はしてありますが、ご本人にお断りしてこの場にその内容を載せることにした。ただし、登場人物はイニシャル、絵文字はカット。それ以外はそのままにした。


「平野せんせ こんにちは はじめまして。 Mの友だちのEです。わたしは平野せんせを見たことがあります。でも平野せんせはわたしのことを知りません。だから、はじめまして。
とつぜんすみません。平野せんせがMに返事を書いたのを見せてもらい、うらやましくなったのでわたしも質問してもいいですか。 します。  大人ってなんですか。どうなったら大人になったといえますか。」



はじめまして Eちゃん。メール、読ませていただきました。いきなりですが、「質問してもいいですか。 します。」って、このたたみ込むような日本語、ヘンです(苦笑) 日本語がヘンというよりも態度がヘンです。それに質問が漠然としていて、どのように答えていいのか、平野せんせはよくわかりません。さっぱりわかりません。犬のお巡りさんも絶対に困るとおもいます。わんわんわわん、わんわんわわん。これからは「問いの立て方」も勉強しましょうね。
でも平野せんせは、わんわんわわんと吠えながら?考えてみました。想像してみました。それを書きます。

結論を先に云うと、「余剰を贈与できる」のが大人というものです。断言します。
「わたしは先達から譲り受けた余剰をいっぱい持っているので、あなたにさしあげます」という態度をとれるのが大人の証です。大人といわれる人が何を余剰として持っているのかは、そのひとそのひとで違っていますが、それは時間だったり、チャンスだったり、知識だったり、あるいはモノだったり、お金だったりします。
何十億円持っていてもわたしには余剰がないと思っている人は子どもです。なぜなら、余剰はその「量」では決定しないからです。量をもって、わたしには贈与する余裕がない、そう思っている人は、はっきりって子どもです。大人になりきれない人はたとえ何十億円持っていても、自分はたったのこれだけしか持っていないから絶対に他人にはあげない。だってもっと欲しいんだもん。まだまだ足りないんだもん。と常に考えています。こういう人は手持ちのモノが目減りすることを極端におそれます。もらえるモノなら病気だって欲しい、と思っています。両脇と股の間にバナナをはさんで、さらに口にもくわえながら、もっとよこせとアゴで云っているサルを想像してみてください。そんな感じです。Eちゃんはそんな人、尊敬できますか。
大人はね、「わたしはこんなことを先達によって学ばせてもらったから、それをあなたにも贈与します。」といって、若手や何某かの理由があって恵まれない人に惜しみなく与えることのできる人なのです。

それからもう一つだけ、大人であるための要件を挙げておきます。
それはね、「高次で人の意見と同意できる能力」です。Eちゃんの周りには、あらゆる問題に対して正論ばかり云って絶対に謝れない人っていませんか。そもそも他人の意見なんかに絶対に同意なんかするもんか、と思っている人です。わたしは正しくて、常にお前は間違っている。そういう態度を、無意識に、あるいは意識的にとっている人です。こういう人は「常に自分は正しい」と思っているために、ものごとをどんどん破壊していきます。人間関係も組織も壊していきます。ヘンでしょう。正しいのに破壊するって。でも、その人にとってみたらそんなことはどうでもいいのです。だって、自分は常に正しいのですから、正しくないことはとっとと壊れていけばいいのです。それが世のために人のためと思っているのですから、壊れて当然なのです。
でもね、こういう人は常に不平不満でいっぱいです。なんでこんなに正しいことがわからないのかね〜、未熟な社会だ。そんなふうに考えています。そうして「自分は常に正しい」という態度を自分の中で合意して、それを担保に言論をはったりしています(はい、もちろん正論や理想をもって語り続けなければならい問題もあるとおもいます。たとえば教育とかね)。
でもね、そうじゃないでしょう、人と人がいっしょに生きていくことって。お互い、違った考え方を持っているのがまず前提にあって、それをいかにすりあわせていくかの方が大事じゃないですか。その方が相対的に世の中がよくなっていくのです。正か悪か、いやお前が悪だ。ではとりつく島がありません。そうではなく、高次で合意形成していく能力こそ知性のなせるワザだし、人としての成熟でしょう。平野せんせはそう考えます。Eちゃんはどう思いますか。
これがEちゃんの質問の答えになっていますか。
ほんとうはまだ書き足りなのですが、平野せんせには締め切りがありますので、きょうはこの辺でおわりにします。

Eちゃん、今度はメールではなくて、Mちゃんもいっしょに直接会って話しましょう。平野せんせに、テニス教えてください。じゃあね、バイバイ。






●最近の、中学生Mちゃんとメールのやりとりはこちらを参考にしてください。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1476.html

http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1473.html



この場にアップした内容は、その後、ペンを入れる場合があります。

バックナンバーはここ↓から。「表示件数」を100件に選択すると見やすくなります。

現在地:トップページ脳内探訪(ダイアリー)

サイトマップ