平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

プチ今年を振り返る。そうして、中山一朗の世界。


◆今年は、公の席で実に色々な方とお話をさせていただいた(今年を振り返るには、ちょっと早いかな)。
 映画監督、漫才師、歴史家、編集者、演出家、科学者、作家、哲学者、画家、政治活動家、建築家、現代アーティストたち、演劇家。そこに加えて、パネルディスカッションでは、お茶のコーディネーターやらB級グルメの仕掛け人たち、それ以外の取材を含めるとジャンルもボリュームも大変な量になる(昨日は、子育てパパの座談会のサポート役だったし)。単なるインタビューと違って、かなり深いところまで掘り起こしていくというシーンも何度かあり、頭を切り換えるのが大変だったし、事前の準備に膨大な時間を割かれた。そこにレギュラーの仕事や大学の授業、どうしてもお断りできない新規の仕事が高波のように打ち寄せてきた。学生たちのいくつかのプロジェクトの相談にものり、千本ノックの経験はないが(千本突き、千本蹴りの経験はある)、たぶんこんな感じなんだろうな〜と想像する。ぜー、ぜー、ぜー、青色吐息、長嘆息、である。
 なぜこんな愚行?に立ち向かうのか。ひとつは、わたし自身がこういったプレッシャーの中に自らを放り込むのが好きだからだ(単純にMでしょう〜なんていわないでね。自らをMと認識するには、自らの中にSが・・・SM論は別の機会に)。追い込まれないと自ら進んで勉強しない。いつもズルをして休みたいと心のどこかで思っている。だってわたしの場合、朝風呂にのんびりと浸かっていても、朝寝しても、飲んだくれいても、基本的に誰からも文句を言われないんだもん。
 でも、一方で公に出れば出るほど人からは厳しく評価され、釘の頭のように叩かれ、文句を言われ、大したこともない奴だと罵られる。場合によってはあんな下世話なところに出るな!という意見もいただく。そうやって公に身を曝すことで、自らを追い込んでいくのが好きなのだ、きっと。それが今の自分のやり方だから仕方がない。わたしだって試行錯誤なんですよ。
 もう一つは、そんな器でもないのに(ちゃんとわかっている)「知の全体を俯瞰したい」という志向があるからだ。すべての専門家になりたいと思っているのではない。しょせん千年かかったって無理だし。そういった意味でわたしは「すべてをつないでいく領域を開拓したい」と考えている。
 わたしが思い描く世界は昨今流行の「実学」ではない。もっと学問の入り口のまたその入り口、建物に喩えるなら、玄関のそのまた手前の門や、まちの入り口や村の入り口の道祖神の役割であり、神話で云えば猿田彦の存在なのだ。
 書いていたら、自分も考えていなかった方向へと話が進んでいった。まぁ、いいか。

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◆先週の土曜日に実施した「情報意匠論」の特別講座へ参加してくださった約45名の学生のみなさん、社会人のみなさま、ありがとうございました。いつも参加してくださるTさん、箱ごとみかんの差し入れありがとうございました。出版社アスペクトの編集長・小村さん、遠路はるばるありがとうございました(きっと帰りの新幹線では爆睡できたでしょう・笑)。野沢さんも本企画の最初から最後までのご協力、ありがとうございました。
 今回は、最初から外へ向けての積極的なPRを一切しませんでした。申しわけないな〜と思いながらも、天晴れ会の会員のみなさまにも会報誌「天晴れ双六」を通してわずか数行の告知をさせて頂いた程度です。ギュッと絞り込んだ人数で、特に学生に「中山一朗の世界」(※プロフィールはこのページの最後)を体験して欲しかったからです。
 身体がズタズタです。ふくらはぎがパンパンです。まさかあんなジャンプするなんて思いませんでした(全員がひとつの宇宙になるというワークショップはレオ・レオニ「スイミー」だね)。平野はリズム感のなさで学生の威厳をなくす(汗)。Sさんは、早口言葉の巧みさで会場中の注目を集める。

 講座修了後にはスノードールカフェへ移動して、中山さんやスノドの柚木さんたちを囲んで、またもやミニ対談になりました。参加して下さった学生や社会人からその場で感想を話していただきましたが、自ら感じたことをその場で言語化するって、想像以上に難しいでしょう。実は、対談や座談の楽しみはそこにあります。大切なのは、相手の言葉によって自らの考えが揺り動かされるあの感覚です。「そういえば、思い出した」の感覚です。
 そうして、「おもしろかったです」「楽しかったです」、これらの言葉を封印し、その先にある思考の深淵へと自らを運んでいくことの難しさと楽しさです。これからも書くスピード、話すスピード、思考するスピード、身体のスピード、その違いを感じてくださいね。
 一行は最後にカフェ・アウラに移動して、更に話し込む。きょうも日をまたいでの帰宅。眠い。じゃあ、またね。

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【中山一朗プロフィール】 
1990年 演出家・鈴木忠志と出会い、水戸芸術館劇団ACM(Acting Company Mito)に入団。その後、劇団SCOT(Suzuki Company of Toga)、(財)静岡県舞台芸術センター劇団SPAC(Shizuoka Performing Arts Center)を経て、2000年に退団。鈴木忠志の代表作「リア王」のリア王役、「ディオニソス」のディオニソス役などを演じる。モスクワのモスクワ芸術座、ロンドンのバービカンシアターなど海外公演に参加。また朗読というジャンルにも積極的に乗り出している。
2002年 日中合作映画『王様の漢方』で映画初出演
2004年 時代劇映画『丹下左善 〜百万両の壷』に出演


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