平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

さみろうおじさんを訪ねて  2018/05/14

ni4



柚木沙弥郎。東京大学で美術史を学ぶ。大原美術館に勤務するなかで、芹沢銈介の型染めの暦と出遭い衝撃を受け、弟子入り。静岡市清水区由比の正雪紺屋に住み込んで型染めの仕事を覚える。後、芹沢も務めていた女子美術大学に専任講師として勤務。教授、学長と歴任。型に学び、型を破ることに生涯をかけた人である。

あとになって分かったことだが、わたしがまだ学生だったころ、「あの沙弥郎さん」のことなどまったく知らずに、かれの作品と何度も出遭っていた。今思えば、わたしの向かう先々に沙弥郎さんが先回りして、いた。あっちにも沙弥郎さん、こっちにも沙弥郎さん、そういうふうにして、沙弥郎さんが待ち構えていた。特に印象的だったのは、大学の先輩I邸での出遭いである。

I邸の居間には大きなタペストリーが掛かっていて、その色遣いや「ゆるい幾何学紋様」がなんとも言えず存在感があり、同じ部屋にかかっていたドガの油(今はドガも好き)よりもわたしの心を強く惹き付けた。先輩に、なんていう人の作品ですか、と訊いても、おれには興味がないといった風で答えず、しかし、何度も通っているうちに先輩の祖母に訊ねる機会があり、沙弥郎さんの名前を知った。不思議な響きのある名前が作品と重なり、更に印象を濃くしていった。

今回、日本民藝館の展示では、沙弥郎さんの初期から近年の作品までを拝見できた。年齢を重ねるごとに益々大胆になっていくそれら作品群に改めて心が大きく動いた(学芸員のSさんにもお目にかかれた。Sさんとは芹沢銈介美術館の美術館協議会で顔を合わせているのでこの場で会えるのは新鮮だ)。

日本民藝館を訪ねた日にも、普段の来館者よりも若い女性の姿を多く見かけた。あまり覗かないTwitterなどを見てみると、若い女性は親近感を込めて「さみろうおじさん」と呼んでいるようだ。


ni1

ni2

ni5

ni3

ni6


yu1

yu2



この場にアップした内容は、その後ペンを入れる場合があります。

バックナンバーはここ↓から。「表示件数」を100件に選択すると見やすくなります。

現在地:トップページ脳内探訪(ダイアリー)

サイトマップ