平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

マイブーム  2017/07/09

miura

そんなわけで(どんなわけかは、ひとつ前の「脳内探訪」の記事を読んでくださいね)、わたしの最近のマイブームは、「みうらじゅん」である。何を今更、だと言われてしまいそうだが、そうだから仕方がないのである。

ことわるまでもないが、「マイブーム」という言葉を生み出した、みうらじゅんその人である。みうらじゅんの生み出した言葉はこれまで多くの人々や時代を動かしてきた。広く知られた「ゆるキャラ」という言葉を生み出したのも、みうらじゅんである。郷土愛を「郷土LOVE」と言い換え、好きな人になりきって「自分」という主語を消すことによって物事をプロデュースする手際や、親孝行というある意味照れくさい行為を「親孝行プレイ」と言い換えることで別次元にスライドさせてみせてくれた。また、無駄な努力をすることの大切を教え、アンチ断捨離を訴え、偉人の顔に落書きをする「らくがお」を推奨し(「らくがお」をするためには、その人のことをよく調べ、観察し、情報収集しなければならない)、暴走族を「おならプープー族」と言い換えることで撲滅しようという、まったもって本質を突く驚くべき提案もしてくれた。

わたしはどんなに忙しくても、月に平均20冊程度の本には目を通す(読書とは、読んだ本の冊数の問題ではないことを承知でここでは言う)。カタイ本もそれなりに読む。歯が立たないかもしれないなあと思いつつ難解な本も手に取ったりする。その中から上半期一位をあげるなら、みうらじゅん『「ない仕事」の作り方』(文藝春秋、2015)である。

「ない仕事」をつくり出す、それがみうらじゅんの仕事術だ。みうらじゅんの方法は、徹底的に自分を洗脳し続けて、あるモノを蒐集し続ける。蒐集して終わるのがふつのコレクターだが、彼は集まったものに新しい価値を与え、まったくこれまでにないジャンルをつくり出していく。そこがみうらじゅんの恐るべき力技なのである。

本書を、タレントのおふざけ本とさげすむ人もいるかもしれない。きっと下品だと鼻で笑う人もいるだろう。だがわたしには、多くの本質的な気づきを与えてくれた本となった。そうしてあまつさえ、みうらじゅんは温又柔(おんゆうじゅう)の「わたしは日本語に住んでいます」という言葉をいつも思い起こさせるのである。

大切なことは繰り返し言う。力強く宣言する。わたしのマイブームは、「みうらじゅん」である。



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