平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

天空のオリーヴは樹齢100年   2016/03/30

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( ↑ )手前と奥のふたつのガーデンに対で植えられている樹齢100年のオリーヴの木。



( ↓ )3階に位置する「d-labo」から下を覗くと・・・

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西畠清順という人物をご存じの方は、大の植物好きかそれを生業としているかのどちらかだろう。いや、最近ではイベント関係者にも広く知られている可能性は高い。ひと言でいえば、現代のプラントハンターである。プラントハンターとは、依頼者のミッションに従って、世界中から珍しい植物を見つけ出してくる職業をいう。歴史をひもとけば17世紀イギリスに辿り付くそうだ(そんなふうによく言われるが、日本の本草学で活躍した人々の方が歴史は長いのではないか。まあ、どちらの国でも、それ以前から名もなき人々が命をかけてプラントハンティングをおこなってきたのだ)。そこにキューガーデンの歴史が接続されるのだ。
そんな現代のプラントハンター西畠清順氏は、1868年(明治元年)から150年続く植物卸問屋「花宇(はなう)」の5代目であり、2012年、植物の魅力を広く伝えるための活動"そら植物園"プロジェクトをスタートさている。

オフィシャルサイトによれば氏のプロフィールは以下の通りである。
「1980年 生まれ。幕末より150年続く花と植木の卸問屋、花宇の五代目。日本全国・世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより海外からの依頼も含め年間2000件もの案件に応えている。」
依頼が年間、2000件というから驚きを禁じ得ない。その仕事は、代々木ヴィレッジの庭、アーティスト大竹伸郎氏の"女根"、瀬戸内国際芸術祭関連のプロジェクト、代官山アートストリートでTOYOTAの新型車とのコラボ、陶芸家内田鋼一氏の展覧会、大崎(東京)再開発の緑化プロジェクト等々、具体的に挙げていったら切りがない。説明仕切れないので、公式サイトを案内しておこう。

◆ そら植物園
http://from-sora.com

プラントハンターの技術は、大きくわけて二つあるという。ひとつは植物の健康状態を見極める力。もう一点は、樹を眠らせることだ。健康状態を診るには、もちろんその全体の気配や細部を観察すればよさそうだが、根の匂いを嗅ぐ、ということも経験を積んだプロフェッショナルならではの方法だ。一方、なぜ樹を眠らせるのかといえば、長旅に耐えるためだ。そのための方策に、枝を落とす作業がある。葉が活動を続けると樹全体に負担がかかるからである。

(こんなふうに続けて書いていくと切りがなくなってしまい本業に差し支えるので、一旦この辺で氏の紹介はやめておこう)


その西畠清順氏の仕事が静岡市内で見られるのをご存知だろうか。場所は、駅前商店街のど真ん中、静岡伊勢丹の目と鼻の先にあるスルガ銀行が運営する「d-labo」がそこである。経営母体となるスルガ銀行(本社:沼津)は、「クレマチスの丘」(※1)を運営する企業だ。

建物の3階にある「d-labo」には、テラスがふたつあり、そこには樹齢100年ともいわれるオリーヴの木が対で植えられている。一年前に、ここを訪れたときよりも確かに枝がのび、緑が生き生きしていた(残念だが、わたしの1万円のデジカメではこの良さが伝えきれない)。オリーヴも老木となるとあまり実を付けなくなるので切られてしまうというのを以前西畠氏の本で知った。花粉の季節が過ぎたら、このテラスに椅子を出してのんびりさせて頂きたい(夢)。自由に手に取れる本が約2000冊常設されているのも魅力だ。スタッフMさんの話だと、間もなく加えて1000冊の本が配架されるという。

そうそう、スタッフのKさんが、「平野様、こんにちは」と声を掛けてくださった。えーっ、一年ぶり、しかも今回2度目にお邪魔したのに、ですよ。サービスって、こう言うことだと改めて思った。すごい。


◆d-labo公式サイト
http://www.d-laboweb.jp/space/shizuoka/


※1 クレマチスの丘は、静岡県長泉町にあって、複数の美術館、レストラン、庭園等を併設する。具体的にはIZU PHOTO(新素材研究所:杉本博司+榊田倫之) MUSEUM、ヴァンジ彫刻庭園美術館、ベルナール・ビッフェ美術館・ビッフェこども美術館、井上靖文学館、クレマチスガーデン等が併設される。

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( ↑ )対になっている反対側の庭園から臨む。

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( ↓ )現在2000冊の本が配架されている。もちろん読み放題。牧場で使われていた木材がテーブルの天板や書棚のパーツに使われている。

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