平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

「手紙の時間」  2015/10/28

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手書きの手紙を出さなくなって久しい。
きっと、仕事もバリバリできて、生活もきちんとしているひとは、電子メールがすっかり普及した現在でも硯に向かって墨を摺り、こころおだやかに一筆したためているのだろう。わたしの周りにも、十指には満たないものの、そういう奇特な方がいる。

わたしはといえば、万年筆を新調したところで気持が途切れてしまうという体たらくである。まったくもって自分のことながら嫌になる。



さて、先般、「手紙の時間」という企画をした方がいて、会場になった「有度珠算専修学校」(静岡市清水区有度 昭和40年開校 御年築50歳)に足を運んだ。

元珠算専修学校に置かれている備品からは当時研鑽していた塾生の気配が今でも漂っていた。日々通う塾生によって、飴色に磨き上げられた机や椅子が実に美しい。

仄聞するところによると、この昭和の建物、この「手紙の時間」展をさいごに解体されるという。ここしばらく使われていなかったために、机上に敷かれたマットは風化して板にこびりつき、一部の場所は物置にもなっていたというが、持ち主は、「手紙の時間」の企画者らの力を借りて、建物を当時使っていた状態に戻してから解体するという。壊すために、元の状態に戻す。塵がすこしでも落ちていることを気持良しとしなかった塾長の思いがこの希有な状況をつくりだしたのだろう。今、これほどまでに丁寧に物事に取り組む人がいったいどれだけいるのか。ほぼ皆無だろう。変な喩えだが、日本では大切な人の亡骸に死化粧をして彼岸に送り出す。まさにその思想だろう。

会場には、主催者の本原令子さんが友人ふたりに声をかけ、各人の曰く因縁?つきの手紙が展示された(「手紙ライブラリー」 出品者:編集者・石垣詩野、イラストレーター・さげさかのりこ、作家・本原令子)。相手をおもいゆったりと手紙を書くための部屋も用意されていた(「手紙の時間」 10月23日(金)24日(土)25日(日)12:00〜17:00)。
こちらもすでに終わっているが、『令子の部屋』というトークライブがあった(10月25日(日)10:30〜12:00 ゲスト:石垣詩野、さげさかのりこ)。この企画が実によかった。


このあと、玉井夕海さん・soloライブ』(10月30日(金)19:30〜20:30 *開場19:00)を最後に「有度珠算専修学校」を見送るという。   潔く、2015年 晩秋。


開催日や時間が限られているので、確認してからお出かけになることをおすすめする。


◆わたしが手紙といえば、まず思い浮かべるのがこの二つ。

・手塚治虫先生の「何かよくわからない」
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1229.html

・宇野千代さんの「ダイキライノ・・・サマ」
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1172.html


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