平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

ちひろ美術館・東京   2014/01/11

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授業の一環であり、平成25年度文化庁 文化芸術振興費補助金「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」の取組でもあるプロジェクトの展示視察のために、学生8名と「ちひろ美術館・東京」へ。
ちひろ美術館・東京は独特の建築である。台形や三角形の建物4棟が連なっている。特徴的なのは、どの棟からも中庭が見える工夫があることだ。美術館は作品保護の観点から直射日光を嫌うが、そういった意味では閉じながら開いている。ガラス越しに見える草木の緑が気持ちいい。つまり、ともすると権威主義に走りがちな美術館の威圧感がないのが特徴である。


さて今回は、個人的に作品を鑑賞するのと違って、自分たちのプロジェクトに、いかに反映させるかという課題があるために、展示のテーマ、流れ、展示方法等、見るべきポイントをほんとうにざっくりと学生に解説して、あとは各人のペースで視察してもらうことにした。メモをたくさん取っている学生達を横目に、わたし自身もイメージをふくらませる。


現在展示中の「ちひろと初山滋 永遠のコドモ」に一言だけ触れておくなら、確かに初山を敬愛していたというちひろのタッチは、一見すると初山のそれに酷似している。ミュージアムショップで、展示室に展示されていたちひろ作品のポストカードがないかと訊かれ、よくよくはなしをうかがってみると、それは初山の絵だったというケースもあるようだ(学芸員の解説)。

目が慣れてくると、両者の違いは歴然として見えてくる。いっときは確かに似ている時期もあったかもしれない。水彩絵の具のにじみやたらし込みの技法がそう思わせるのであろう。だが、全仕事を俯瞰するなら初山の仕事はよりグラフィカル(装飾的)である。初山の版画の仕事を見ればそれが顕著である。色彩も感覚もまるで違うのである。ちひろの絵には、雨の匂いやこどもたちの声がある。

とにかく、ちひろ、初山の同じテーマの作品(たとえば「人魚姫」「マッチ売りの少女」など)を原画を通して比較しながら鑑賞できるという、なんとも贅沢な展示であった。

○ちひろ美術館公式サイト
http://www.chihiro.jp

「ちひろと初山滋 永遠のコドモ」展
http://www.chihiro.jp/tokyo/museum/schedule/2013/0218_1645.html



個人的には、第二展示室に復元された、ちひろのアトリエを間近に凝視し、まるで原稿を頂きにあがった編集者にでもなったような気分だった。



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建築:内藤廣



○安曇野ちひろ美術館は、今頃雪なのかなあ。それともここは降らないのかなあ。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1651.html



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