平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

運命の人って存在するの?   2011/05/31

cha


運命の人って存在するの?

運命の人とある日ばったり街角で出会うという神話を私は信じません。運命の人は手間隙かけて自分でつくっていくものだと思う。結婚してなくたっていいんです。相手が自分を運命の人と思ってなくても、かまわないんです。

谷川俊太郎さんが詩集『私の胸は小さすぎる』(角川学芸出版)の冒頭に掲げているメッセージです。




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中城ふみ子の名を識る者は、歌の世界に身をおくひとか、その道の研究者のどちらかでしょう。
今この場には、中城ふみ子についてのプロフィールは書き付けないでおくといたします。代わりになんと云っておきましょうか、そうですね〜、イメージは、与謝野晶子の横に、静かに後ろを向いて立っているひと、とでも書いておきましょう(はい、すぐに検索しないでくださいね)。
 
かがまりて君の靴紐結びやる卑近なかたちよ倖せといふは

この歌には二つの目線が行き交います。彼の靴紐を屈んで直してあげている女性の心の目。それを上から眺める男性の目。それが男女互いの中でおき、さらにそこには読み手の目線も重なって、ことはもっと複雑です。
幸せというのは、何もハレの場にだけあるではなく、日常のそこここにあるものです。それに気づけた時に、本当の意味での幸せを手に入れることができるのです。もちろんこのような解釈でも間違っているわけではありません。
しかし、この歌を詠んだ中城ふみ子の生涯を識れば識るほど、まったく別の軌道を通過して、「日常のそこここに幸せはあるものだ」に行き着いていることを知らされるのです。
くれぐれも彼女の名をチャチャチャと検索してすませないように。それよりも、手帳のすみにでも小さな文字でメモしておきましょう。
中井英夫によって発掘されたふみ子は、ある日、「そんな日」にばったりと出逢うにふさわしい歌人です。

衝撃的な出会い。

nakajyo





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