平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

「我々の値打ちは次回作で決まる」 Walter Elias Disney   2011/03/28

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静岡大学人文学部言語文化学科の授業「情報意匠論」で取り組んできた島田市博物館(静岡県島田市)とのコラボレーション企画のゴールがやっと見えてきた。あとは印刷に送ったパンフレットの仕上がりを待つだけとなった。当初目論んでいた企画とはかなり違ったかたちにはなったものの、まずは一区切りといったところだろう。

仕上がってみると「ペラ一枚」ということにはなるが、授業が終わって一年、しかし最後まで諦めないで活動を続けてきた「チームNINSOKU」を今いちばん労いたい(ありがとう、みんな!!)。また今回のプロジェクトでは、島田市博物館の「学生といっしょになって考え、動く」という理解ある態度がなければ決して一定の成果は出せなかっただろう。
「プレゼンテーションをする側」と「プレゼンを受ける側」というふた手に別れてしまうと、「君たち大学生に学習のチャンスを与えてやっているのだから、中身をチェックさせてもらうからね」という態度になってしまう。これではいい関係は築けないし、納得いく成果は残せない。社会と大学が協働で何かを創って行くときのポイントはまさにここにあるといっても過言ではない。

ちなみに「チームNINSOKU」の構成メンバーはすべて言語文化学科の学生達で、デザインの「スキル」はゼロに等しい。「ハウツー」も何もない。だがどうしたら博物館を訪れた人々が常設展示をきちんと見て理解してくれるのか。その場合のパンフレットの役割とは何か。その大きな課題に正面から立ち向かったのである。
わたしは思う。「チームNINSOKU」にデザインスキルなどなくてよかったと。スキルがあると、本当に伝えたいことよりもテクニックに走ってしまう可能性がどんどん高くなる。こういった状況下で仮に博物館側と意見の違いをみた場合、学生達は「わたしたちのデザインセンスを理解してもらえない」と言い出すかもしれない。これは明らかに逃げ口上である。下手にデザインのハウツーなどなくて正解なのである。それは我々デザインの門外漢がこういったプロジェクトにかかわることの大きな意義を意味している。敢えて断っておくと、それは決してデザインの力を否定するものではない。

博物館のある職員が、「またいっしょにやりましょう」と云ってくださった。
これ以上うれしい言葉はない。「チームNINSOKU」の最後まで諦めない活動によって、次なるフィールドが広がったのだ。

最後にウォルト・ディズニーの言葉を引いておく。

「我々の値打ちは次回作で決まる」。

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毎回、同じ釜の飯を食べるのも大切な仕事。


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