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K美術館『水木しげると貸本漫画と「ガロ」の時代』&予告『つりたくにこ展』  2010/10/06

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K美術館(静岡県駿東郡清水町伏見254-4)で、「水木しげると貸本漫画と『ガロ』の時代」という展覧会が行われている。2010年10月17日(日)まで。ここで展示されている貸本はすべて館長である越沼正さん個人のコレクションだ。
館内は展示室をぐるりと取り囲むように往年の『ガロ』が並ぶ。展示されている貸本はすべて手にとって読むことができる。

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漫画を借りた子どもたちの痕跡。その貸し出し処理は貸本屋によって様々だが、おおむね手書きか粗末なスタンプで処理されている。( ↓ )

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展示されている漫画を手に取りパラパラやると、貸本漫画特有の読書の投稿欄が目にとまる。日本各地の漫画家志望者が「わたしの力作、見て、見て」と腕をふるうページだ。

この投稿欄で越沼館長に教えてもらい、ひっくり返りそうになったのが、水木しげるの「ただで原稿差し上げます」といった内容のメッセージだ。なんと郵送の切手さえ送れば、生原稿を希望者全員に差し上げるというのである。
えーーーー!!! 信じられない。
この時代にタイムスリップして、両の手をいっぱいに広げて、水木しげるの原画を独占したい(笑)
こんなふうだ( ↓ ) 

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( ↓ )①②を続けて読んでみてください。良い時代ですね〜。

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ところで今では、水木しげるのアシスタントをしていた「つりたくにこ」の名を知るものは余りいない。いや、もしかするとつりた氏活躍当時でさえ、ごく一部の熱烈なファンの間でのみ知られていた名前かもしれない。1964年 長井勝一によって創刊された月刊漫画誌『ガロ』を中心に活躍していた漫画家である。
現在K美術館では、37歳で逝った若き天才の出番を待っている(11月9日から『つりたくにこ展』を開催予定)。この展覧会は絶対に見ておいた方がいいですよ。

「つりたくにこ」については改めてこの場に書くことになるだろう。

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つりたくにこ作『六の宮姫子の悲劇』。 上の写真が原画で、下が実際に『ガロ』に掲載されたもの。

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つりたくにこさんのパートナー高橋直行さん(左)と越沼正館長。
高橋さんの語り口調から、作品への愛情が伝わってくる。

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これらの原画は、高橋さんの許可を頂きこの場にアップしています。コピー・転載を固くお断りします。



この日はともかく情報盛りだくさん。越沼館長から特別に見せて頂いた小原古邨の木版画の前で思わず息を呑む。古邨といっても知らない人がほとんどだろう。わたしもその一人であった。一羽の雀が鳴子を支える紐の上にとまった瞬間を捉えた作品からは、ふわっとした雀の僅かな重力を感じ、そうして鳴子の音が風に乗って聞こえてくる。小原古邨、もうその名を決して忘れない。

ところで、このK美術館、館内には常設展示として画家の味戸ケイコさんの作品や陶芸家で書家の北一明さんもの作品も多数展示されている。味戸さんは、内田麟太郎さんの絵本の表紙などの仕事もある。こちらも必見。

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その味戸ケイコさんが、越沼館長について書かれた文章( ↑ )。

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K美術館の越沼正さん。
またこういった展覧会を支えているのがUさんというデザイナーである。


K美術館のサイト
http://web.thn.jp/kbi/


こちらもご覧ください
「『ガロ』の星 マンガ家つりたくにこ展 はじまる  2010/11/09 」
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1388.html

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朝日新聞 2010/10/07朝刊



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