平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

空想書店 ばさねた堂   2010/05/07

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2002年1月から2006年2月までの5年と2ヶ月の間、新聞販売促進を目的としたフリーペーパーに「空想書店 ばさねた堂」(月刊)という読み切りの連載を持っていた。
「ばさねた」とは、古書業界の符牒で、バサッと束ねた本の山に、キラッと光る一冊が混じっていること。あるいは、その本そのものをいう。

内容は、わたしが古書店の店主役として登場し、そこへ歴史上知られた人物(ほとんどが故人)が客として入ってくる。幽霊のようにいつの間にか店内にいる人物、ぶつぶつ言いながら暖簾をくぐる者、店内で大暴れする輩など実に様々である。
そこでわたしと客が、その人物が活躍した背景や自著、それを取り巻く書物の話を繰り広げる。そうして最後にわたしから、その人物に「この本を読みなさい。あなたの歴史(世界の歴史)は変わるかもしれない」といって、ある一冊の本を押し売りする(結局、お代はいりませんとなる。『ブラック・ジャック』的?)、そんな内容であった。連載の最終回は、閉店セールの店に徳富蘆花(徳富蘇峰の実弟ね)がやって来て店じまいとなった。
これを連載しているときに、編集部宛「このばさねた堂はどこに店舗があるんですか」と尋ねてくる人たちが何人かいたというから愉快である。また、ありがたいことに、ひじょうにマニアックな方々からの異常な反応をいくつも頂いた(笑) まあ、そういった連載であった。

写真の名刺(↓)、今風に言えばショップカードは、静岡大学の学生Cさんが、版木を彫り、一枚一枚摺ってくれたもの。

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