平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

杉本博司 IZU PHOTO MUSEUM 2009/11/30

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IZU PHOTO MUSEUMで写真家・杉本博司 「HIROSHI SUGIMOTO NATURE OF LIGHT 光の自然(じねん)」をたっぷりと感応する。キュレーターとおぼしき男性が教示してくれたところによるとIZU PHOTO MUSEUMは、建築から庭まで一切合切を、杉本博司が妥協を排して作り上げたものらしい。そもそも、このフォトミュージアムは、日本画の美術館だったところを杉本がリノベーションしたものだ。実は新しく生まれ変わったミュージアムにはそんな「過去の記憶」が随所にみられる。
ミュージアム入り口の『放電日月山水図』という巨大な作品は、カメラもレンズも用いず直接フィルムに放電することにより、その光跡を焼き付けた杉本の傑作だ。放電は水中でおきている。これは杉本をさんざん苦しめてきた現像時の目に見えぬ静電気の正体を、彼自身がついに突き止め、写し取ったものだ。『放電場』の向かえに展示されている13世紀鎌倉時代の雷神像が、この放電の印象をさらに強調する。そうして、ここからがポイントなのだが、この巨大な作品を、少し離れた場所から自ら(鑑賞者)の姿勢そのものを、床面を這うようにしながら眺めることをおすすめする。床に入ったクラック一つ一つが、なんとこの放電と響き合って写真からはみ出しているではないか。この空間全体が、現像液の中だともいえる。しかもさらに目をこらすと、これも意図したものか、なんと悠久の流れともみえる川面が突如床面に現れるのである。
また館内には、石組みの中庭を鑑賞する空間がある。そこでは観賞用の長い木の椅子が用意されている(椅子の素材である木と窓枠の木が同じ素材で響き合っている)。その椅子の脚になっているガラスに注目された。なぜそこガラスがそこまで透明で輝いているのか。その理由はここでは伏せておくことにする。その場に立って想像を巡らせてほしい。
とにかく、このミュージアム、圧巻。

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IZU PHOTO MUSEUMのアプローチ。この続きはぜひ会場へ。

ここも必ずご覧になってください。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1139.html

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同じクレマチスの丘のミュージアムショップでは、山中祐一郎さんや野木村敦史さんたちの本を収納する道具類の展覧会が開催されている。それは販売されている本に混じって展示されているところがいい。


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